不動産売却の費用と手取り額の計算を解説
不動産を売却すると「いくら手元に残るのか」が一番気になると思いますが、実際には売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。仲介手数料や税金、住宅ローンの残債など、さまざまな費用を差し引いた金額が最終的な手取り額となります。
この記事では、不動産売却時にかかる費用の種類と計算方法、手取り額のシミュレーション、そして節税に使える特例まで、順を追って解説します。東近江市・近江八幡市・彦根市エリアでの売却を検討されている方に向けた具体的な数字例も掲載していますので、ぜひ資金計画の参考にしてください。
1. 手取り額は「売却価格-費用-税金-ローン残債」で考える
不動産売却における手取り額は、次の計算式で求めます。
手取り額 = 売却価格 ー 諸費用(仲介手数料・登記費用等) ー 税金(譲渡所得税等) ー 住宅ローン残債
たとえば2,000万円で売れた戸建てでも、諸費用・税金・ローン残債の合計が700万円あれば、手取りは1,300万円です。売却価格=手取り額と思い込んで資金計画を立てると、新居の購入費用や引越し費用が足りなくなるケースがあります。
一般的に、売却にかかる諸費用の総額は売却価格の4〜6%程度が目安とされています。2,000万円の物件であれば80万〜120万円の費用が発生する計算です。費用の内訳は次の章で詳しく確認していきます。
【ポイント】
「諸費用」は手取り計算で使う概念、「譲渡費用」は税金計算(譲渡所得)で使う概念です。含まれる項目が異なるため、混同しないように注意が必要です(詳しくは4章で解説)。
2. 不動産売却でかかる費用一覧
不動産売却でかかる主な費用を整理します。状況によって発生しないものもありますが、事前にすべての項目を把握しておくことが大切です。
仲介手数料:売却価格×3%+6万円+消費税仲介売却の場合
印紙税:1,000円〜3万円(軽減税率)全員
登録免許税・司法書士費用:2万〜3万円程度ローンあり
住宅ローン一括返済手数料:1万〜5万円程度ローンあり
測量費用:30万〜80万円程度土地・境界未確定
ハウスクリーニング費用;3万〜15万円程度任意
解体費用:90万〜150万円程度(木造30坪)更地売却の場合
引越し費用:5万〜30万円程度居住中の場合
2-1. 仲介手数料(最大の支出)
仲介手数料は、売却を依頼した不動産会社に支払う成功報酬です。売買が成立したときにのみ発生します。法律(宅地建物取引業法)で上限が定められており、売却価格が400万円を超える場合の計算式は次のとおりです。
仲介手数料の上限(税込) = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
例えば2,000万円の物件なら、(2,000万円×3%+6万円)×1.1=72万6,000円が上限です。これが売却費用のなかで最も大きな出費となります。なお2024年7月の法改正により、売却価格が800万円以下の場合は買主・売主双方の承諾を得ることで、最大30万円(税抜)まで請求できるようになりました。これは低価格帯物件の流通促進を目的とした改正です。
仲介手数料の支払いタイミングは、一般的に「売買契約締結時に半額、引渡し時に残り半額」となります。ただし不動産会社によって異なるため、媒介契約を結ぶ際に確認しておきましょう。
2-2. 印紙税(売買契約書にかかる税)
印紙税は、売買契約書に収入印紙を貼ることで納税する税金です。契約書に記載された売買価格に応じて金額が変わります。現在、2027年(令和9年)3月31日までに作成される不動産売買契約書には軽減税率が適用されています。
1,000万円超〜5,000万円以下:2万円(1万円)
5,000万円超〜1億円以下:6万円(3万円)
1億円超〜5億円以下:10万円(6万円)
※()内は2027年3月31日まで有効な軽減税率
売買契約書は売主・買主がそれぞれ1通ずつ保管するため、各自が自分の分の印紙税を負担するのが一般的です。
2-3. 登録免許税・抵当権抹消費用
住宅ローンを組んで購入した不動産には、金融機関の担保(抵当権)が設定されています。売却時にはこの抵当権を抹消する登記が必要で、登録免許税として不動産1個につき1,000円を納めます(土地と建物それぞれで1,000円ずつ、計2,000円)。
手続き自体は自分でも可能ですが、書類の取り寄せや法務局への申請など専門的な作業が伴うため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士への報酬は1万5,000円〜2万円程度が相場です。
2-4. 住宅ローン一括返済手数料
ローン残債がある場合、売却代金でローンを一括返済します。このとき、金融機関への繰り上げ返済手数料として1万〜5万円程度がかかることがあります。インターネットバンキングを利用すると無料になる金融機関もあるため、事前に確認しておくと節約になります。
2-5. その他の費用(状況によって発生)
測量費用は、土地の境界が確定していない場合に必要です。境界確定測量の費用は30万〜80万円が目安ですが、隣地との交渉状況や土地の形状によって大きく変わります。東近江市・近江八幡市エリアの郊外物件では、古くから所有している土地ほど境界が曖昧なケースが多く、早めの確認が重要です。
ハウスクリーニングは任意ですが、マンションや築浅物件では内覧印象を高めるために実施することがあります。費用は一戸建てで5万〜15万円程度です。
解体費用は、建物を取り壊して更地で売却する場合に発生します。木造30坪の建物で90万〜150万円が目安ですが、アスベストの含有有無や重機の進入可否によっても変わります。解体後に更地となると固定資産税が最大6倍になる点にも注意が必要です。
3. 手取り額の考え方を売却事例で簡単にシミュレーションする
実際にどのくらいの手取りになるかを、東近江市エリアで多い「戸建て売却」の事例で確認してみましょう。
【前提条件】
売却価格:2,000万円
住宅ローン残債:400万円
物件種別木造戸建て・居住用
所有期間:15年
【費用の試算】
仲介手数料(税込):72万6,000円
印紙税(軽減税率):1万円
抵当権抹消費用(司法書士含む):2万円
ローン一括返済手数料:2万円
諸費用合計約78万円
【手取り額の概算】
2,000万円(売却価格) − 78万円(諸費用) − 400万円(ローン残債) ≒ 1,522万円
売却による利益(譲渡所得)が発生した場合は、この1,522万円から税金も差し引かれます。ただ、この事例の場合は所有期間が15年と長く、マイホームの3,000万円特別控除を適用すると税金はゼロになります(詳しくは5章で解説)。
【ポイント】
諸費用は「売却前」に出ていく費用もあります。仲介手数料は成約後の支払いですが、測量費用や解体を行う場合は売却活動の前に先払いが必要です。手持ち資金に余裕があるか、事前に確認しておきましょう。
4. 売却で利益が出ると発生する税金(譲渡所得税)
不動産売却で利益(譲渡所得)が出た場合、所得税・住民税・復興特別所得税の3種類がかかります。まとめて「譲渡所得税」と呼ばれます。
不動産売却で利益(譲渡所得)が出た場合、所得税・住民税・復興特別所得税の3種類がかかります。まとめて「譲渡所得税」と呼ばれます。
4-1. 譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 ー 取得費 ー 譲渡費用
この計算結果がプラスであれば税金が発生し、マイナス(譲渡損失)であれば原則として税金はかかりません。
4-2. 取得費とは
取得費とは、その不動産を購入したときにかかった費用の合計です。具体的には購入代金・仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・リフォーム費用(設備の改良に限る)などが含まれます。建物については、時間の経過による価値の低下(減価償却)を反映した金額を使います。
建物の取得費 = 購入時の建物価格 ー 減価償却費
非事業用の木造一戸建ての場合、償却率は0.031です。たとえば建物部分が1,500万円で所有期間が15年の場合、
減価償却費 = 1,500万円 × 0.9 × 0.031 × 15年 ≒ 628万円
この場合の建物取得費は 1,500万円 ー 628万円 = 872万円となります。
売買契約書や領収書などを紛失してしまった場合は、「売却価格の5%」を取得費として使うことが認められています(概算取得費)。ただし、概算取得費は実際の取得費より低くなることが多く、課税額が大きくなるリスクがあります。古い物件を売却する場合は、購入当時の書類を可能な限り探すことが節税対策になります。
4-3. 譲渡費用とは(諸費用との違いに注意)
「譲渡費用」は、税金を計算するためだけに使う専門的な概念で、売却するために直接かかった費用のみが対象です。国税庁の定義(No.3255)では以下のものが該当します。
● 不動産会社に支払った仲介手数料
● 売買契約書の印紙税
● 建物の取壊し費用(更地売却の場合)
● 測量費用
● 立退料(貸家の場合)
● 売却のために解除した違約金
一方で、引越し費用・住宅ローン一括返済手数料・抵当権抹消費用は譲渡費用に含まれません。手取り計算では差し引けますが、税金計算では経費として認められないため、注意が必要です。
4-4. 所有期間による税率の違い(長期・短期)
譲渡所得税の税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって大きく異なります。
※復興特別所得税は2037年12月31日まで課税されます
所有期間が5年を超えるかどうかで税率がほぼ2倍変わります。相続などで取得した不動産は、被相続人の取得日から所有期間を計算できるため、長期に該当するケースも多くあります。
5. 節税に使える特例・控除
不動産売却には、条件を満たすと税負担を大幅に減らせる特例・控除が複数用意されています。主なものを確認しておきましょう。
5-1. 3,000万円特別控除(マイホーム売却の最強特例)
現在住んでいる(または住まなくなって3年以内の)マイホームを売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。
課税対象 = 譲渡所得 ー 3,000万円(控除額)
東近江市エリアの一般的な戸建て売却では、譲渡所得が3,000万円を超えることは稀なので、この特例を適用すると税額がゼロになるケースが多いです。ただし、以下の点に注意が必要です。
● 売却の前年・前々年にこの特例を使っていないこと
● 売買の相手が配偶者や直系血族などでないこと
● 売却した家屋に住んでいること(または住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却)
● 適用を受けるには確定申告が必要
5-2. 10年超所有の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却する場合、3,000万円特別控除に加えて、さらに低い税率が適用されます。
【課税長期譲渡所得の金額税率合計】
6,000万円以下の部分14.21%(通常の長期20.315%より約6%低い)
6,000万円超の部分20.315%(通常の長期と同じ)
3,000万円特別控除と組み合わせて使えるため、長期保有のマイホームを売る場合は非常に有利な特例です。
5-3. 買い替え特例・譲渡損失の損益通算
マイホームを買い替える場合は「特定居住用財産の買換え特例」が使えることがあります。ただしこの特例は「課税を繰り延べる」制度であり、税金が免除されるわけではない点に注意が必要です。
また、売却で損失が出た場合(譲渡損失)でも、一定の要件を満たせば他の所得と損益通算できる特例があります。ローンが残っている状態で売却損が出た方は、税理士や不動産会社に相談してみてください。
6. 売却後は確定申告が必要
不動産を売却した翌年の2月16日〜3月15日(毎年)に確定申告が必要なケースがあります。
確定申告が必要な場合
● 売却で譲渡所得(利益)が発生した場合
● 3,000万円特別控除など各種特例を適用する場合(税額がゼロになる場合でも申告が必要)
● 売却で損失が出て損益通算や繰越控除を使いたい場合
確定申告が不要な場合
● 特例を使わず、譲渡所得がゼロまたはマイナスの場合
給与所得者の方でも、不動産売却の確定申告は年末調整では対応できませんので、自分で行うか、税理士に依頼する必要があります。申告に必要な主な書類は次のとおりですので、不動産売却活動中であっても頭の隅に置いておきたいですね。
● 売買契約書のコピー(売却時・購入時の両方)
● 仲介手数料の領収書
● 登記事項証明書
● 住民票の写し(居住用特例を使う場合)
● 確定申告書・譲渡所得の内訳書
7. 手取り額を増やすためにできること
最後に、手取り額を少しでも増やすために押さえておきたいポイントを整理します。
7-1. 適正価格で売る(査定が最重要)
手取り額を最大化するには、まず適正な売却価格を把握することが出発点です。査定価格が低すぎれば、いくら費用を節約しても手取りは増えません。
ただ、査定価格が高すぎるとなかなか売れずに値引きを繰り返し、売れ残りのイメージがついてしまいます。不動産会社は、自社で契約がほしいため査定価格を高めに出すケースもありますので、査定額が客観的なデータに基づいた相場に近い価格になっているかを確認する必要があります。
査定額を確認すると言っても、一般の方にはなかなか難しい判断になると思います。今の時代、 WEBやAIで調べれば販売する場所の凡その土地価格が分かりますが、細かい立地条件や建物の査定次第で金額が左右されるため、査定経験がないと正しい判断は難しいです。
地域の取引実績を熟知した不動産会社に査定を依頼することで、より実情に即した売却価格の提案を受けられますが、査定額の根拠がどのように説明されるかをしっかり聞いておくことも重要になります。
7-2. 費用の「落とし穴」を事前に把握しておく
手取り額を減らす「落とし穴」として多いのが以下のパターンです。
ローン残債の確認漏れ:残債が売却価格を上回ると「オーバーローン」となり、手持ち現金での補填が必要になります
測量費用の未計上:境界未確定の土地は売却前に測量が必要なことが多く、30万〜80万円の追加費用が発生します
解体費用の過大計上:古家付き土地を解体して更地にするかどうかは、費用対効果を見極めてから決める必要があります(解体せずに古家付きで売れるケースも多いため)
税金の確認不足:短期譲渡所得(所有5年以下)の場合、税率が約40%と高く、手取りに大きく影響します
とくに、古い土地建物の場合は境界線が確定していないケースがあり、売却するためには境界確定を行うための測量等の作業が発生します。その他、不動産会社に相談するまではどのような費用が発生するか分からないため注意してください。
7-3. 地元の不動産会社に相談するメリット
大手ポータルサイトや大手不動産会社での情報収集も重要ですが、地域に根ざした不動産会社でなければわからない情報もよくあります。
● 地域ごとの実際の成約価格(非公開情報含む)
● エリアの買い手ニーズ(子育て世代・投資家・農家など)
など、地元の地主と繋がっている、地元の不動産会社ならではの対応があったりするので、大手不動産や地元の不動産会社など複数の不動産会社に相談するのが理想ですね。。売りたい物件を一社だけと契約する専任媒介契約や、複数の不動産会社と契約できる一般媒介契約など、契約方法は3種類あるので、要望に併せて不動産会社との契約方法を検討してください。
まとめ
不動産売却の手取り額は「売却価格から費用・税金・ローン残債を差し引いた金額」です。主なポイントを整理しますので、最後に振り返っていただければ幸いです。
● 諸費用は売却価格の4〜6%程度(仲介手数料が最大)
● 売却益には譲渡所得税が発生(所有5年超:20.315%、5年以下:39.63%)
● マイホームは3,000万円特別控除で税額ゼロになるケースが多い
● 東近江市・滋賀県エリアの戸建て売却(2,000万円前後)では、特例適用後の手取りは1,400万〜1,600万円前後が目安
● 確定申告は忘れずに行うこと(特例適用には申告が必要)
● 正確な計算は、地元の不動産会社または税理士への相談が確実
