古民家リフォームの注意点
現代の新築ではなく、古き良き時代のものを活かす暮らしを理想とする方も多くいらっしゃいます。私の兄も、新築ではなく築50年ほどの古民家を購入しリフォームしました。その際の現場でもありましたが、古民家ならではのリフォームする際の注意点がいくつかありますのでご紹介したいと思います。
なお、一般的にほとんどのケースで水回りのリフォームをされると思いますので、水回り関連は割愛します。
経年劣化による床の凹みやきしみ
築年数が長い建物は、僅かながらに歪み等がでています。床は微妙に凹んでいたりきしんだり。窓周辺の歪みがあると隙間が生じているケースも。
床がきしむ場合、床下の土台がしなることで音を発してしまいます。昔は写真のように太い柱の上に細い柱を乗せ、この上に板を貼る工法が多かったのですが、施工精度のばらつき・シロアリ・湿気によるカビ等の要因によって一定の確率できしみ等が発生します。
古民家のリフォーム時はよく見られる現象ですので、床の土台からしっかりリフォームする場合が多いですが、土台までリフォームすると手間とコストがかかるため、コストを抑えるために既存の床材の上に新しい床材を貼るだけのリフォームをされるケースもあります。
しかし、既存の床材の上に新しい床材を貼ってしまうと、土台の劣化は放置されてしまいます。結果的に数年後改めて土台からやり直すことになりかねないので、床のリフォームは土台からやり直しておくのが理想ですね。
古民家の夏は涼しいが冬は底冷えしやすい
古民家の夏の涼しさを経験されている方も多いと思いますが、古民家のほとんどは画像のように屋根の軒で太陽の光を遮っています。
太陽光の熱量は暖房器具に匹敵するほどのエネルギーですが、太陽光を遮ることで家全体が暖まるのを防ぎ、夏であっても涼しい環境を実現しています。
風通しの良い間取り等その他の工夫も見られますが、軒で太陽光を遮るというのが1番大きなポイントです。現代の断熱材を利用した住宅よりも古民家の方が夏が涼しいのは、太陽光を遮る設計になっているからですね。
さて、夏は涼しい古民家ですが、逆に冬は外気温の影響を受けやすく冷え込みます。夏は太陽光を遮るだけで暑さ対策ができますが、逆に住宅の冬の寒さ対策は断熱性能に依存するからです。
古民家は断熱性能が高くなく、漆喰の壁も断熱材を使った現代に比べて約1/2の性能になります。床下も通気性を優先されているので、外気温とほぼ同じになり床が冷やされます。
また隙間が多く外気が室内を通りやすいです。夏は通気性の良さがメリットでしたが、冬では逆にデメリットとなります。窓も1枚ガラスのケースが多く、昔にリフォームしてあっても熱伝導率の良いアルミ素材の窓枠が採用されているケースが多く寒さに拍車をかけます。
まとめると、
●床の断熱対策
●主に窓周辺の隙間対策
●窓を2重ガラスにして、窓枠を断熱効果の高い樹脂タイプに
●可能なら玄関も断熱仕様にリフォーム
これらの断熱対策を行うのが理想です。床に関しては冒頭でも触れた通り、床の土台からリフォームするのが理想ですが、その際に断熱材を敷き詰める仕様にすることで断熱効果も上がります。床材を上から張るだけだと断熱対策ができないので、冬場は底冷えしやすくなりますね。
屋根はしっかり中から確認
古民家の場合、見た目がきれいでも中から見ると傷んでいるところが多いというのはよくある話です。冷たい空気は下に落ちてくるので、屋根が傷んで隙間があると上部からどんどん家の中を冷やしていきます。
理想は屋根の補修プラスαで断熱材を敷き詰めることですが、予算的に難しい場合はせめて隙間を埋めるなどの補修はしておきましょう。
古民家リフォームは家全体をチェックしよう
一般的なリフォームの場合は、水回りや窓・ドア等の建付けの悪さなど、目に見えるところは普通にリフォームされます。ですが、一般の方が気づかないポイントや普段あまり目にしない場所にこそ快適に長く住むための重要な点があります。
もし私がお客さまの立場なら、おせっかいなほど細かな提案ができる担当者さんであれば嬉しいですが、中には目に見える範囲のシンプルなリフォームの提案だけで終わるケースも。
業界関係者でない限り、住む前からリフォームの前後でどのような住環境になるか想像するのは困難ですが、古い建物のリフォームは予算を削りすぎるととくに冬の寒さに堪えます。リフォームの見積もりは、金額だけでなく内容もしっかり確認してみくださいね。
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